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ぼくの(リアル)なつやすみ 1

■2003/08/22(Fri.)■

▼はじまり

 7月26日に休日出勤したため、好きな時に代休がとれる、という話はすでに書いたが、それを本日に設定したのには、ワケがある。ここではみなさんご存知のアッチが、22〜24までの3日間連休だというのだ。黒い日赤い日カンケーなしの勤務体制で働いている彼と、3日間も休みが重なるなんてぇことは、これはもう絶望的なまでに低い可能性なのであり(別に絶望はしないが)、この機を逃さば果たしていつ……!!!と、新米にも関わらず3連休設定とした。

 さて、我が両親が、約30年住まった京都を離れ、母方の実家である岡山の片田舎に移り住んだという話は、ご存知の方もおられるかとは思うが、我々はこの3日の休暇を利用して「盆休みをやり直すぜツアー 2003」を敢行すべく、岡山へと向かったのであった。何せ盆は、熱戦河川銃撃戦の予定が、阿鼻叫喚のニンニク地獄に変貌し、挙句の果てに居酒屋で寝転んでサケ呑んでいる、という体たらくだったからなぁ。

 数日前に父に電話したところ、世間は冷夏冷夏とさわがしいにも関わらず、現地はここ最近連日の真夏日であり、川をおよぐサカナもうれしそうに泳ぎ回っているとのこと。美酒美食スイカに花火に釣竿まで用意しているとかで、ひょっとして一番楽しみにしているのは親父なのではないかと思ってしまった。

▼宿酔とダッシュと温泉

 というわけで、午前9時に地下鉄竹田駅で待ち合わせて、一路岡山に向かうのだった。俺は免許を持っていないので、運転は完全にアッチに一任してしまうことになり、なんとも申し訳ないというか命がけというか……。が、それよりも何よりも、昨夜呑み過ぎた俺は見事に宿酔であり、「とりあえずお茶買うしコンビニ寄ってくれ」というなんともナサケナイスタートをきる羽目になったのである。

高速にて。ケースにはニワトリくんが満載でした。 今日の予定は、名神高速&山陽自動車道で「鴨方」まで行き、すぐそばの「遥照山温泉」につかり、まぁあとはブラブラして夕方に親の家に着く、というようなダンドリだったわけだが、トバしすぎアッチのおかげというか、そのせいでというか、昼前にはすでに遥照山温泉に到着していた。

 温泉は、郵政公社の「かんぽの宿」内にあり、500円ぐらいで入り放題。が、どこにも成分表示らしきものがなく、平日ということもあり客は近所のジーサンバーサンぐらいのものでなんとなく普段通っている銭湯と大差ないのではないか??という気もした。ただ、「遥照山」というだけのことはあって全面ガラス張りのその外は絶景……と言いたいところだけど、あまりに山の中すぎて窓の外はすぐにヤブだったりしたのだった。

 「メシでも食うか」ということになったのだけど、かんぽの宿のメシはどれもこれもバカ高くて、この先の運転もありビールの呑めないアッチと共に刺身だの懐石だのを食う気にはとてもなれず、とりあえず退散。退散してクルマを走らせていると、もう親の家の目と鼻の先にまで来てしまった。いくらなんでもちょっとまだ早すぎるだろうということで、なんとなく的にコンビニに入る。ちなみに町内に2軒あるうちの1軒である。「町内」って、いわゆるご近所さんの意味での「町内」じゃないよ。「○○郡○○町」の町内だからね。

▼急遽参入企画

 そのコンビニで、forジモティーなタウン情報誌「ふくやま」を発見!京都で言う「CF」とか「leaf」みたいなもんか。しかし中国地方にもこういう雑誌があったとは……。でまぁ、なんでそんな雑誌が我々の目についたかというと、丁度今月号の特集が「この夏、マイナスイオン天国へ− 滝と名水の音風景」だったからに他ならない。名水と言えば、先日伏見の御香宮へ行ってきたばかりである。うまい水といえばうまい酒、と直結思考なアッチはもちろん、水のある風景大好きっ子な俺も「ドタンバ的急遽名水ツアー」には何の異論もない。雑誌を開いてみると、ここからクルマですぐのあたりに滝と名水の場所があるらしく、その近くには、歴史戦国合戦ファンにはたまらない「中世夢ケ原」という施設があるらしい、ということが分かった。時刻はまだ昼を少しまわったばかりである。我々は勇んでクルマに飛び乗った。

▼山の砦に羽つきの響き

 名水はとりあえず後回しにして、中世夢ケ原へ向かう。ここは鎌倉〜室町前期にかけての中小城塞都市を再現したもので、砦を中心として「市」や農家など、当時の様々な建築風俗様式をご堪能ください、という所なのだけど、現地までたどり着いてなんとなく良くない予感がした。だだっ広い駐車場に、1台もクルマがとまっていないのである。まぁ金曜日だし、昼過ぎだし、わからんでもないのだけど、数年前に甲賀の忍術村に行った時のことをフト思いだしたのである。

 入場料を払って中に入ると、案の定他の客は気配もなく、なんとなく全体的にひっそりとしている。城塞都市、というよりはむしろ「大群の敵襲におびえ一族郎党逃走もしくは離散」という雰囲気がする。それでもまぁ農家とか商家とか見ていったら、「市」の片隅でなにやらトンカン音がする。行ってみると、当時の装束にコスプレした2人組が、一心不乱に刀を打っている。「ふいご」というやつをシュゴーシュゴーとやって、真っ赤な鉄と目下格闘中なのだ。ただまぁ、これもあくまでアトラクションなので、だんだん刀の形になっていったりは決してしない。この人たちは年中こうやって鉄のカタマリをガンガン叩いているのかと思うとちょっとやるせない気分になってきた。しかも、今は俺たちだけのためにこうやって暑苦しい日に炎のそばで実演してくれているのだ。涙を誘うではないか。代休をとって夏休みをやり直している場合ではないのだ……という気になってくる。

 やるせない気分を振り切ってさらに進むと、2頭のヤギが飼われていた。当時城塞都市にはヤギが飼われていたのだろうか。農耕用の牛なら分かるけど、ヤギというのが果たしてどういう用途で飼われていたのか残念ながら無知な我々には知る術もなく(農家などにはちゃんとあった解説もここにはなく、ただ唐突にヤギが出現したので)、ウリウリ遊んでいるだけで数十分過ごせてしまった。うーむ、これは一体どうなんだろう。

 奥に進むと、ようやく「屋敷&砦」という武士エリアに入ってきた。この屋敷、おそらくかなり再現度は高いのではないかと思う。謁見の間や武器庫、馬小屋、厨までほぼ一通りそろっているではないか。もしかしたらここの職員は閉園したらみんなここで暮らしているんじゃないか、ということを話し合ったりもしたがそんなワケはないのだ。

敵襲確認できず。 地上から約5階建てぐらいの高さのやぐらに登ると、さすがに絶景である。かなり遠くの方まで見渡せて、風も心地よくサイコーの気分だったのだが、真下を見ると我々が通ってきた道は木々に埋もれてよく見えない。これではやぐらの意味をなしていないのではないか……??などとツッコんでいると、どこからともなく「ドパーン!!!!」と銃声。一瞬後、元の静寂。ナンダナンダと耳をすませてみるのだけど、どうもよくわからない。「火縄銃実演コーナー」とかあるんちゃうか?と、マヌケな期待もしたのだけど、そんなわけはないのである。

 帰りに別ルートで歩いてみると、来るときには見なかった農家がまだあった。行ってみると軒下に昔の子どものおもちゃが置いてあり、どうもそれは展示品というよりは「体験してみてください」というような具合なのだ。しかし置いてあるのは「あしたのジョー」のメンコとか、少女漫画チックな羽子板とかで、これらが室町時代に一般的であったとはとても思えない代物ばかり。でもマァ、おれも65キロオーバーしたことだし、ちょっと運動でも……ということで羽つきをはじめる。何しろバドミントン部出身のexit君直伝である。負けるはずはないのだけど、こういうルールもネットもない単なる「打ち合い」というのは、なまじ走ってとれるだけに、上手い方がくたびれてしょうがないんであった。アッチも鍛えられた足腰と身軽さを駆使して動き回るために、2人してもうハチャメチャの盛り上がりようなのでした。2人ともアツくなり、挙句の果てには「おれ、風向き的に不利やから、風向きに直角に打ち合うようにしようや」などと言って場所を替えはじめる始末。そうこうしていると、さっきは気づかなかったのだけど、奥の方の施設で働いていたんであろうオバちゃんが、トボトボと出口の方へ歩いていった。そういえば、さっき砦でギャァギャァ言ってた時点ですでに閉園時間だった。こんな所で羽つきしている場合ではないのだ。にもかかわらず、すぐそばに転がっていた竹馬でまたギャァギャァ騒いだりしてしまった。止める人間がいないと、とことん遊び尽くそうとするのが我々なのである。

 しかしまぁ、いくらなんでもそろそろ……と思って出口までおもくと、そこは完全に閉鎖されていた。うそ!?俺らもしかしてこれから「エセ中世人」としてここで生きていくの?さっきのオバちゃんとか、コスプレ刀鍛冶とか、みんな元・観光客なん!?などと思っていると「通れるで」とアッチ。なんと格子のスキマから難なく出入りできるじゃないですか。でまぁ、色々堪能した結果、ここは「探偵!ナイトスクープ」でいうところのいわゆるパラダイスに他ならないという結論を出したのである。exitくんに激しくオススメです。今度ぜひ3人で。

▼水はどこだ!!

 本日の最終イベント、雄虎の滝へ向かう。情報誌「ふくやま」によると、井原鉄道の「小田駅」交差点を右折して山の方へ走ってわりとすぐ、という話なのだが、駅が分からない。井原鉄道というのは第3セクターによるローカル単線の鉄道なので、さして期待はしていなかったが、それにしても貧弱だ。見つけたとき「もしかして、あれが駅なのか!?」と仰天したぐらいである。それでもなお滝は見つからず、小一時間さまよった挙句、近隣の農家のオバちゃんに聞いてみたところ、そこから100メートルほど先で農道に入り、未舗装の山道をぐいぐい登っていくとあるらしい。わかるかっちゅーねんそんなん。

030822_3.jpg 苦心の末にたどりついた「雄虎の滝」は、「まぁ…滝と言えば滝やけど…」というようなシロモノであった。しかしまぁそこから引き込まれている湧水は、苔むした石の鉢にポタポタと流れ出ており、さっそくペットボトルをあてがう俺とアッチ。

▼到着そして

 予定より少し遅れて親の家に到着。アッチ運転お疲れ様なのでした。丁度近所のオッチャンが来ていたところで、俺の老親祖父母+オッチャンの5名でお出迎え。いやはやまったくすごい賓客扱い。アッチいわく「誰が誰かわからんかった」。とのこと。

 すでにバンメシは用意してありました。この田舎新居、リビングの作りが俺の旧家とほぼ同じになっている。使いやすかったんだろうな。だがそのおかげで賓客だというのになんとなく落ち着かず「…なんか手伝うことない?」などとソワソワしてしまう。「ええからオマエ座っとれ!」などと怒られたりして、なんでこっちに来て気を遣った挙句怒られてんだ?といまひとつ釈然としないが、こっちも負けていない。何しろ現在はなんと収入があるのだ!!京都から引っさげてきた「神聖 純米吟醸」を贈呈。あとはまぁ祖父母も交えていろんな雑談。

030822_4.jpg 夜早い年寄りも自分の家(隣)に引き返し、のんべぇ4人でうだうだと過ごす。酔い覚ましに散歩でも行こうや、ということになり、フラフラと街灯もないような真夜中の田舎道を歩く。道の両側はもちろん田んぼだ。アッチがいたくゴキゲンだったのは、酔いのせいばかりではなかったようにおもう。温泉・川・山・酒肴・囲炉裏・オモロイ近所の人々、星……。彼が目下夢見あこがれる生活が、そこにはすべてあったのだ。移住用に昨年おっ建てた両親の家だが、将来これを受け継ぐのは俺じゃなくてアッチなんじゃないかと、正直思った。

 真夜中のド田舎道路に寝っころがって「こんな生活があと2日も待ってるんやでぇ!」と嬉々としてコメントした彼がとても印象的だった。



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